僕は人間でないらしく













ある日、メルティオーレと名乗る不審な美少女が現れ,倫太に告げる。 「あなたは、人間ではありません
同じクラスの、通称“バイオレンスJK”狛江さくらと共に倫太は謎の解明に乗り出す。 「人間じゃなければ何なんだ!?
そして明かされる出生の秘密と過去の誘拐事件の真相倫太とさくらの、熱く激しい戦いが、ここに始まる!

祖母は尋常でないらしく

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【番外編】祖母は尋常でないらしく(1)

今日は日曜日だ。

風がさわさわ、小鳥がチチチ。
爽やか極まりない朝だった。

母さんは、日ハムとビジターで対戦する父さんを追っかけて北海道だし、ヒカリは最近出来た恋人の家に入り浸りだから、家には来ないだろう。

コトリが来たらウザいので、僕は、散歩に出かけることにした。

それが、間違いだったのかもしれない。

公園で缶コーヒーを飲んでたら、徹夜で遊んだ帰りらしいリア充大学生軍団に絡まれて、その中の非常に豊満な身体を持つ女性が、やたらと僕に胸を押し付けてくるのに対し、

「やめ、やめて……やめろよ! デブ!」

と、思わずストレートな発言をしてしまったところ、女性の彼氏らしき男が激怒し、公園の外に停めてた車に乗り込んだかと思ったら、そのまま柵を破壊し公園の中にまで乗り込んできて、推定時速30キロ程度のスピードで、僕は跳ねられてしまった。

朦朧とした意識で、

「どうする、これ」「まだ生きてるべ」「捨てるか」「山だな」「山だな」

などといった会話を聞きながら車に載せられ、山に運ばれ、県境になってる辺りの崖から、

「「「「「ばいば~い」」」」」

と捨てられてゴロンゴロンと転がり落ちる途中で気を失い、崖底近くの木の枝に引っかかった状態で意識を取り戻したら、もう夕方になっていた。

「いてててて……ただいまー」

家に帰り、誰も居ないはずだけど、一応あいさつして中に入ると、狛江さんがいた。
まあ、それはいい。

狛江さんに 家の鍵を渡したりした憶えも無いんだけど、まあ、それもいいだろう。
だって、狛江さんは僕の彼女なんだし。

問題は……

「お、おかえりー」
狛江さんの声に含まれた緊張と、

「……お帰り」
彼女と、向き合ってソファーに座っている人だった。

その人は、学生時代の母さんをガラスの灰皿で殴りつけてKOしたり、あるいは、プロ入団後3年連続で打率8割を記録し天狗になっていた父さんを三球勝負で破り、野球への初心を取り戻させた人でもあった。

その人は、僕の……

「おばあちゃん、来てたの!?」
「おお。きたよお。倫ちゃん」

……おばあちゃんなのだった。

<<すげえな、三上くんのばあちゃん>>

テレパシー的なアレで、狛江さんが話しかけてきた。
前回の戦闘の後から、変身しなくても使える様になった能力だ。

<<半端ねえな。尋常じゃねえよ>>

【番外編】祖母は尋常でないらしく(2)


半端じゃない……
そして、尋常じゃない……

狛江さんの発したフレーズから、思い当たることがあった。
僕もまた、テレパシー的なアレで、狛江さんに訊いてみた。

(狛江さん。おばあちゃんと、どこで会ったの?)
(『ガラマサ』――
親父に、予約した牛肉引き取って来てくれって頼まれたんだ)
(どうしてそんなところで!?)

『ガラマサ』は、二四時間営業の業務用スーパーで、我が家からは駅を越えて二〇分ほど歩いた場所にある。

電車で一時間もかかる町に住んでるおばあちゃんと狛江さんが、どうしてそんなところで出会うことになったのか、まったく経緯が分からなかった。

でもまあ、それは後で聞けばいいとして……

(まあいいや。狛江さん、おばあちゃんから、どんな話を聞いたの?)
(えーと、大学でガン◯ムの富◯監督と学生運動したりとか……) 

(子供の頃サインを貰った川上◯治が、いかに嫌な人間だったかって話は?)
(あー、聞いた聞いた。でも知らなかったなー。東京ド◯ムが、ジャイア◯ツの攻撃の時だけ空調をイジってホームランが出やすくしてるって噂、本当だったんだな―)

その話が出たということは、おばあちゃんは、少なくとも、持ちネタの三分の一まで話したということになる。
そこからまた学生時代の話に戻って、ガン◯ムの原案を考えたのは自分だと主張しだしたら、三分の二。

僕はまだ聞いたことがないけど、父さんによると、そこから更に三分の一が残っているのだそうだ。
ちなみにその内容は、教えてもらえなかった。

もっと聞きたくて僕がぐずると、 
『知らなくていいよ!』
と、横から母さんが吐き捨てるように言って、その時は、それでおしまい。

ちなみに母さんは、おばあちゃんと仲が悪い。
まあ、言うまでもないことなのかもしれないけど……
 
 「それで美津子さんの教えた内容が元になって、ザンボッ◯3が作られたと。あ、ちょっと家に電話かけてきますね」

狛江さんが中座したタイミングで、おばあちゃんに訊いてみた。
ねえ、おばあちゃん……

「狛江さんのこと、結構、気に入った?」
「気に入ったよ? だって、いい子じゃない」

やっぱり、そうか。
おばあちゃんの『
ガン◯ムの原案を考えたのは自分だ』という主張だけど、ごく稀に『ガン◯ム』が『ザンボッ◯3』に変わる――そしてそれは、おばあちゃんが相手を凄く気に入った場合に限られていた。

「あーあ。レイコも和也くんなんかじゃなくて、リョウタくんと一緒になれば良かったのに……」

出た。
(出ちゃった……おばあちゃんの、父さん下げ)
おばあちゃんは、父さんよりも、狛江さんのお父さんのリョウタくんを気に入っている。

それは母さんの学生時代からずっとだそうで、それが、母さんとおばあちゃんの不和の原因のひとつらしい。

父さんに野球を教えたのは、おばあちゃんだ。
おばあちゃんは、父さんの入ってる少年野球のチームの監督をしていた。

その頃から、おばあちゃんの父さんに対する評価は、かなり低かったんだそうだ。
技術とか才能とは別の――ぶっちゃけ、人間性の部分で。

母さんが、いつか言ってた。
『思うんだけどさ、あのババアがパパを鍛えまくったのは、アタシから引き離すためだったんじゃないかな……野球でスターになれば、アタシ以外の女とくっついて、離れていくんじゃないかって……』

おばあちゃんが、言った。
「でも、さくらちゃんが
倫太くんと結婚すれば、同じだね
と、にこり。

『同じじゃねえよ、ババア』――この場に母さんがいたら、きっとそう言ったに違いないと思うと、なんだか胃が痛くなってくる僕だった。

 

【番外編】祖母は尋常でないらしく(3)

それにしても何となくモヤモヤしてしまうのは、狛江さんが、お祖母ちゃんの話を信じきってる風だということだ。

僕のお祖母ちゃんということは、狛江さん視点では身内に該当しているだろうことは、想像に難くない。そして狛江さんには、身内限定の性善説みたいなものがある。

だから(それかな?) とも思ったけど……でも実際は、全然違うんじゃないかって気もする。

これまで僕は、お祖母ちゃんの話を、半分以上ウソなんだと思っていた。

ガン◯ムの監督と知り合いとかいうのは、あまりに現実味がなかったし、母さんの『あのババア、適当なことばっか言いやがって……』の枕詞から始まる、お婆ちゃんディスりタイムも少なからず影響していた。

でも今は、ちょっと違う。
以前の様に、疑ってはいない。でも信じているわけでもない。 
言うなら、信じる信じない以前の段階に戻っている。

居間に戻ってくるなり、狛江さんが言った。
「親父が、店でごちそうしたいって言ってるんですけど……」

「嬉しいわあ。さすがリョウタ君は、気が利くわよねえ」お祖母ちゃんは、礼儀としてこういう話を断らない。「やっぱり、和也とは違うわよねえ」そして、父さんをディスることを忘れない。

ささっとテーブルを片付けて、先頭で居間を出た――と思ったら、既に玄関を出て、携帯でタクシーを呼んでるおばあちゃん。

僕はまだ、居間を出てすらいないというのに――肘を突つかれた。

見ると狛江さんが、
(どうしたよ?)って顔で微笑っている。

「なんでもない」
言って、僕は狛江さんの手を握った。

「へ、へー。ニヤニヤしてるから、何かと思ったんだけどー(棒)」

ちょっと赤くなって俯く狛江さんを見ながら、僕は思う。

(狛江さんみたいな娘と付き合えたらいいのにな)
って――そして、はっとなる。

(狛江さんは、僕の恋人なんだ)

きっと一ヶ月前の僕だったら、信じられなかっただろう。
でもこれは、本当のことだ。

いつか、何の話題でだったかは忘れたけど、狛江さんが言ってた。

「そうだったら、おもしれーよな!」
って。

僕も、同じだった。
お祖母ちゃんの話を聞きながら、母さんのお祖母ちゃんディスを聞きながら、心のどこかで思っていた。

(本当だったら、面白いのにな)
って。

ハングレールのことを知って、僕の世界は変わった。

以前までなら、ウソでしかあり得なかったようなことが、本当であってもおかしくない世界に。
狛江さんが僕の恋人になってくれるだなんて、ウソみたいなことが本当になってしまう世界に。
 
だから、僕はもう、お祖母ちゃんの話を疑っていない。
だってこの世界では、ウソよりも、本当のことの方がずっと多いんだから。

またも僕は、ニヤニヤしてたのだろうか?

「まったく、おもしれーよな?」
狛江さんが、顔をくしゃりとさせて、笑った。

やはりというか、当然というか、異常に可愛い笑顔で、改めてドキドキして、今度は僕が赤くなる番で、照れ隠しとか、それで勢いがついたからとかいうわけでもないんだけど、僕は、以前から気になってたことを、お祖母ちゃんに訊いてみることにした。

「ねえお祖母ちゃん。母さんが不良になったのって、ハングレールのことと関係あるの?」
「ううん。育て方を間違えただけ」

その後の五分間、僕は、なんとも言えない気持ちでタクシーを待つしかなかった。
 
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