僕は人間でないらしく













ある日、メルティオーレと名乗る不審な美少女が現れ,倫太に告げる。 「あなたは、人間ではありません
同じクラスの、通称“バイオレンスJK”狛江さくらと共に倫太は謎の解明に乗り出す。 「人間じゃなければ何なんだ!?
そして明かされる出生の秘密と過去の誘拐事件の真相倫太とさくらの、熱く激しい戦いが、ここに始まる!

本編

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登場人物

<主役の二人>
三上倫太:
高校1年生。中学生の時、誘拐されたことがある。身長、体重、運動神経に特筆する点は無し。頭はかなり良い方だが、勉学に役立つのとは別の種類の頭の良さであるため、本人はそれに気づいていない。性格は、意外と無責任。身長170センチ、体重62キロ。得意教科は世界史。一人称は「僕」。

狛江さくら:高校1年生。超美少女で巨乳。金髪と制服の上から着た学校指定のジャージがトレードマーク。日本人の父親とフィンランド人の母親の間に生まれた(ちなみに母親は、スウェーデンポップの歌手として有名)。喧嘩が非常に強く「バイオレンスJC」の異名を持っていたが、高校進学と同時に「バイオレンスJK」にジョブチェンジ。身長155センチ、体重48キロ(Eカップ)。一人称は「自分」。得意教科は数学。趣味は海外のビジネス本の読破。最近、翻訳の良し悪しがわかるようになってきた。


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【改訂版】<1> バイオレンスJK ~狛江さくらについて~

高校に入学して、三ヶ月が経った。

まず僕が訴えたいのは、狛江さくら(以下、狛江さん)が、凄い美少女だということだ。

狛江さんが、どれくらいの美少女かといえば――いまも教室では、こんな噂話が囁かれている。

「狛江さん、入学式の帰りに喧嘩してたって本当かな?」
「ほんとうだよ。駅の近くの交差点でしょ? それって、相手は、うちのお兄ちゃんの大学の先輩だったみたい。みんな柔道とか格闘技をやってる人だったんだけど…」
「相手は一人じゃないの?」
「うん。五人いたんだけど、みんな奥歯が無くなっちゃって、歯医者に行ってる」
前歯じゃないのかよ」

と、そんな内容なのだが、そんな恐ろしい噂が流れてるにもかかわらず、僕が最初にその噂を聞いた週だけで十二人が狛江さんに告白し、その後三ヶ月での累計はユニークユーザ数で百七十六人にまで達している。
 
つまり狛江さんは、そんな噂話を聞いたくらいでは、好きになってしまった気持ちを抑えられないくらいの美少女なのだった。

現時点で僕が得ている狛江さんについての情報といったら、まだまだごくごく僅かでしかなくて、日本人のお父さんと、スウェーデンポップスの歌手として来日したフィンランド人のお母さんとの間に生まれた日芬ハーフらしいとか、制服の上に学校指定のジャージの上下を着るという彼女のスタイルが、中学時代から続くものらしいとか、我が校で三年ぶりに発生した『一年戦争』を僅か二日終結させたらしいとか、不良とか真面目とか関係なく、このあたりの中高生だったら一度は聞いたことがある『バイオレンスJC』が、この春『バイオレンスJK』にジョブチェンジしたらしいとか、元『バイオレンスJC』で現『バイオレンスJK』の『狛江さくら』が、噂以上の美少女で校内騒然とかいった、その程度に過ぎない。

ちなみに僕は、件の百七十六人には含まれていない。
しかし、いつ百七十七人目になってもおかしくはない状況だとだけ、言っておこう。 

【改訂版】<2>その後の麗レイコ ~両親の仲が良すぎて子供が疎外感を覚えるというのとは、また別だと思う~

時刻は七時五〇分。

「おいおいおいおい! ありえねーだろ」

昨夜、目覚まし代わりにテレビのタイマーをセットして眠りについた僕だったのだが、結局、目がさめたのは、母さんのマウントパンチでだった。

「おぅら起きろ坊主! 倫太!

ぼすぼすと布団越しに落とされる拳。
そして、鳴りやまないテレビの大音量。
目覚ましに使う位だから、当然、ボリュームは最大だ。
朝の番組にありがちな司会者のドヤ顔トークが、ガラスをびりびり震わせている。

『いやあ、最近暑くなってきましたけど、薄着になって分かるのはね、年を取ってくると、何より首周りに加齢の影響が出てくるなってこと。ボクの同年代の人たちなんかは、本当に首がミイラみたいに細くなっちゃってる。その点、ボクは知り合いの社長さんに貰ったサプリメントなんかを飲んで……』

「黙れハゲ!

テレビに向かって叫ぶと、母さんは体勢を変え、再び僕に拳を落とし始めるのかと思ったら、

「毟るぞハゲ!!!
 
もう一度叫んで、 それから僕への打擲を再開した。
 
ぼすぼす。

「こら倫太! 朝っぱらからデカい音出しやがって! おめーは、どこのベルサイユ宮殿に住んでんだ!? あぁん?」

ぼすぼすぼす。
 
母さんは、十六年前は県下で最強を誇ったヤンキーで、いまも髪は当時のままの金色だ。
ヤンキーというと、『極悪のXX』とか『地獄のXX』とか、物騒なふたつ名が付くのが普通だと思うけど、母さんの場合、そういうのは無くて、本名のままで恐れられていたらしい。
 
『麗(うるわし)レイコ』と。

それが、三上レイコに代わったのが十五年前。ちなみに僕は今年十六歳で、母さんが僕を妊娠した年齢と同じで、父さんが母さんを孕ませた年齢までは、あと二年ある。

「ほらママ。ママが布団の上に乗ったままじゃ、倫太も起きられないだろ?」
「あ、そうかあ。パパってば、あったまいいね!」

いつからいたのか父さん(今年三十四歳)のアドバイスで、母さんが、ようやく僕の上から退いてくれた。
しかし……

「ほら、リモコンあったよ。ママ」
「えー、どこにあったのぉ? あたし、ぜんぜん気が付かなかったよー」

キャッキャウフフ声をあげる両親に、でもまだ僕は布団から起き上がれずにいた。

「ママがあんまりキレイすぎるから、リモコンが恥ずかしがって隠れちゃったんだよ」
「やだ~。パパったら、だめだってば、そんなこと言ったら……まだ朝なんだ・か・ら」
「え!? じゃあ、夜ならいいの?」
「もう、やだ~。パパったら、へんなこと訊かないでよ~。朝でも夜でも、答えはもちろん、Y・E・S。我が家のイエス・ノー枕に、NOの二文字は、あ・り・ま・せ・ん

いちゃいちゃするもんか。いちゃいちゃするもんか。いちゃいちゃするもんか――大人になって結婚しても、子供の前では、絶対にいちゃいちゃしないようにしよう――そんな誓いを立てる、僕だった。

【改訂版】<3>コトリとヒカリ ~友人からは”ゼロ年代的美少女”と評されている叔母二人~

時刻は8時15分。

両親がいちゃいちゃしながら僕の部屋から出て行った後も、精神と肉体両面のダメージから僕は布団を出られず、辛うじて食事を取れそうなくらいまで回復するのを待ってたら遅刻ぎりぎりで、結局、朝ご飯は食べずに家を出ることとなった。

見送ってくれたのは、母方の二人の叔母だ。

「いってらっしゃい!」
元気いっぱいのヒカリ(二十才、大学生)に、
「……いってらっしゃい」
茶碗を持った手の中指でメガネを持ち上げて、ニタリと笑うコトリ(二十五歳、ニート)

二人とも近所に部屋を借りていて、朝と夕の食事時だけ僕の家に来る。
見送ってくれるのはありがたいんだけど、二人とも茶碗と箸を持ったまま玄関まで出てくるのには、毎朝のことだが、茶碗と箸くらい置いてくれば良いのにと思う。

「行ってきまーす」

歩き出すと、視界の隅で、ヒカリのゴスロリドレスと、コトリのショートカットの髪がふぁさふぁさ揺れているのが見えた。
「「く~る~ま~に~き~を~つ~け~て~ね~」」
二人とも胴体をぎこちなくねらせて、その姿は、あたかも体が固い人のやるベリーダンス
非常に不可解というか不気味だ。
 両手がふさがってて手が振れないから、代わりにあんな動作で見送っているんだろうけど……
だから、茶碗と箸くらい置いてくれば良いのにと……これも毎朝のことだった。

家から学校までは1キロ弱といったところで、遅刻ぎりぎりの時刻とはいえ、走れば楽勝だ。

時刻は八時二十二分。

学校までは、あと五分もかからず着くはずだ。
朝のホームルームが始まるのが八時三〇分だから、ちょっとくらいの遅れなら、校門から昇降口までのダッシュでゼロに出来るくらいのタイミング。

ところで、そのとき僕は、考えていた。
そして、思い出していた。

臨死体験についてだ。

【改訂版】<4>思春期の少女の腕力って意外とハンパない~コトリのジャイアントスイング~

別に、母さんのパンチに死の恐怖を感じたからとかそういうのじゃなくて、記憶の奥のつながりで、ちょっと思い出していた――よく聞くこんなフレーズに関する思い出だ。

『死に直面した人間の脳内では、走馬燈のごとく過去の記憶が巡って見える』

誰からなのかは分からないけど――僕が初めて聞いたのは、四歳の時だった。
疑問に思って、思ったまま僕(当時四歳)は訊ねた。

「走馬燈って、なあに?」


自販機と、黄色い看板の貼られた電柱のある角を曲がれば、あとはまっすぐだ。
自販機と、黄色い看板の貼られた電柱のある角を曲がった。

● ●

舌っ足らずな質問に、最初に答えたのは、叔母のヒカリ(当時八歳)だった。
「あのね、あのね。うーん。うーん……メリーゴウランドみたいな?感じかな?」
と、やや装飾過剰気味な黒いブラウスの袖を弄りながら、八歳の少女なりに真摯に回答してくれたのだけど……

● ● ●

自販機と、黄色い看板の貼られた電柱のある角を曲がれば、あとはまっすぐだ。
自販機で、白い服を着た女の子が何か買おうとしている。
あの指の位置からすると、多分、ペットボトルのお茶だ。
僕は、彼女の背後を通って、電柱のある角を曲がった。

● ● ● ●

メリーゴウランドみたいなもの。
そう言われても、僕(当時四歳)には、そもそも、メリーゴウランド自体が何なのかすら分からない。
(???)
自分の頭の上に浮かんだ疑問符を、僕は見上げていたはずだ。
さぞや可愛かったに違いない。

ずいっとフレームの外からアップで登場し、僕をのぞき込んできた叔母のコトリ(当時十三歳)がどんな表情をしていたか――とりあえず、その時感じた不可解さについては、十二年経ったいまでも、忘れていない。
そして、現在の僕(今年で十六歳)にはわかる。
あの時、コトリは明らかに――欲情していた。

● ● ● ● ●

自販機と、黄色い看板の貼られた電柱のある角を曲がれば、あとはまっすぐだ。
自販機で、白い服を着た女の子が何か買おうとしている。
あの指の位置からすると、多分、ペットボトルのお茶だ。
その横で、黒い服を着た女の子が、ニヤニヤ笑いながら立っている。
おそらく白い女の子の死角で、暖かいコーヒーのボタンを押そうとしていた。
僕は、彼女たち背後を通って、電柱のある角を曲がった。

● ● ● ● ● ●

「……お義兄ちゃんと、お姉ちゃん……両方の血を引いた、この顔、この身体……加えて、初恋の相手の子であり、それを奪っていった恋敵の子であり、甥でもあるという私との関係性……イケる……イケる……イケる!」
僕の両足を撫で擦りながら、鼻息を荒くするコトリ。

「お、お姉ちゃん!倫太くんに何するの!?」
慌てふためくヒカリに、コトリは、こう答えた。
両脇に僕の脚を抱えて、ぼそりと、

「……ジャイアントスイング」

そして、回り始めた
僕の中に『世界』という言葉――いや『世界』という概念が生まれた瞬間だった。

「……いち……に……さん……し……」

コトリの、まったくスピード感の無いカウントとは裏腹に、
「ひゃあっ!お姉ちゃん!そんなに回したら、倫太くんの中身が偏っちゃうぅぅ!」
『世界』が、凄いスピードで回っていた。

荒くなるコトリの鼻息。
「ふんか、くんか、ふんが、くんか、ふんか、ふんが……」
わからないのは、欲情がどうしてジャイアントスイングに繋がるのかという点なのだけど、自分も思春期を迎え、当時のコトリより年上になった現在の僕なら、そのうち理解出来るようになるのではないかと思っている。

そして……

● ● ● ● ● ● ●

自販機と、黄色い看板の貼られた電柱のある角を曲がれば、あとはまっすぐだ。
自販機で、白い服を着た女の子が何か買おうとしている。
あの指の位置からすると、多分、ペットボトルのお茶だ。
その横で、黒い服を着た女の子が、ニヤニヤ笑いながら立っている。
おそらく白い女の子の死角で、暖かいコーヒーのボタンを押そうとしていた――と、その動きが止まった

理由は、ひとつしかありえなかった。
僕が、歩くのを止めたからだ。

● ● ● ● ● ● ● ●

そして僕(当時四歳)は、一瞬で理解していた。
走馬燈がどんなものなのか。
走馬燈のように景色が巡って見えるというのが、どういうことなのか……
もっとも、走馬燈が回ってるのを見るのと、走馬燈のように回って見るのとでは、まったく逆ではあるのだけど。

ちなみに、ジャイアントスイングは、母さんの現役ヤンキー時代の得意技でもあったらしい。

● ● ● ● ● ● ● ● ●

そして僕(今年で十六歳)は理解する。
どうして僕は、朝からこんなことを考えているのか、その理由を。

● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

いま僕は、目の前にある角を曲がれずにいる。

【改訂版】<5>黒い服と白い服 ~ドレスを想像するかもしれないけど、二人とも割とカジュアルな装いでしたよ~

自販機と、黄色い看板の貼られた電柱のある角。
あの黄色い看板の角を、何度曲がっても、元の位置に戻ってしまう
同じコトを何度も繰り返している――ループ。
明らかに、ループしている。
明らかに、危険だ。

そういえば――仮にだ。

こんな状態に陥るのを、僕の無意識とか、本能とか呼ばれる部分が、あらかじめ察知していたのだとしたら?

それに備えて、危機を乗り越えるのに必要になりそうな情報を、あらかじめ僕に思い起こさせていたのだとしたら?

あたかも死に直面した人間の脳内を、走馬燈のごとく過去の記憶が巡って見せるかのごとく。

立ち止まった僕を、最初に振り向いて見たのは、黒い服の少女だった。
それから白い服の少女が、僕を見て笑った。
僕も、二人を見た。

間違いない――僕は確信する。

この二人がすべての原因で、この二人に抗うために、僕は考えていたのだ。
そして、思い出していたのだ。
叔母のヒカリコトリ、それから母さんのことを。

考え、思い出し、記憶の中から掘り起こしていたのだ。
彼女たちの美貌を。

紛れもない美女や美少女である彼女たちの姿を思い浮かべて、美形、美人、美女、美少女に対する免疫力を、高めておかなければならなかったのだ。

次の瞬間、目の前にどんな美しい女性が現れたとしても、惑わされないようにするために。
そうしておく必要があったのだ。
そうしておかなかったら――

いま目の前にある二つの笑顔を目にした途端、僕は、魂を抜かれてしまっていたに違いない。

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