自販機と、黄色い看板の貼られた電柱のある角。
あの黄色い看板の角を、何度曲がっても、元の位置に戻ってしまう
同じコトを何度も繰り返している――ループ。
明らかに、ループしている。
明らかに、危険だ。

そういえば――仮にだ。

こんな状態に陥るのを、僕の無意識とか、本能とか呼ばれる部分が、あらかじめ察知していたのだとしたら?

それに備えて、危機を乗り越えるのに必要になりそうな情報を、あらかじめ僕に思い起こさせていたのだとしたら?

あたかも死に直面した人間の脳内を、走馬燈のごとく過去の記憶が巡って見せるかのごとく。

立ち止まった僕を、最初に振り向いて見たのは、黒い服の少女だった。
それから白い服の少女が、僕を見て笑った。
僕も、二人を見た。

間違いない――僕は確信する。

この二人がすべての原因で、この二人に抗うために、僕は考えていたのだ。
そして、思い出していたのだ。
叔母のヒカリコトリ、それから母さんのことを。

考え、思い出し、記憶の中から掘り起こしていたのだ。
彼女たちの美貌を。

紛れもない美女や美少女である彼女たちの姿を思い浮かべて、美形、美人、美女、美少女に対する免疫力を、高めておかなければならなかったのだ。

次の瞬間、目の前にどんな美しい女性が現れたとしても、惑わされないようにするために。
そうしておく必要があったのだ。
そうしておかなかったら――

いま目の前にある二つの笑顔を目にした途端、僕は、魂を抜かれてしまっていたに違いない。