時刻は8時15分。

両親がいちゃいちゃしながら僕の部屋から出て行った後も、精神と肉体両面のダメージから僕は布団を出られず、辛うじて食事を取れそうなくらいまで回復するのを待ってたら遅刻ぎりぎりで、結局、朝ご飯は食べずに家を出ることとなった。

見送ってくれたのは、母方の二人の叔母だ。

「いってらっしゃい!」
元気いっぱいのヒカリ(二十才、大学生)に、
「……いってらっしゃい」
茶碗を持った手の中指でメガネを持ち上げて、ニタリと笑うコトリ(二十五歳、ニート)

二人とも近所に部屋を借りていて、朝と夕の食事時だけ僕の家に来る。
見送ってくれるのはありがたいんだけど、二人とも茶碗と箸を持ったまま玄関まで出てくるのには、毎朝のことだが、茶碗と箸くらい置いてくれば良いのにと思う。

「行ってきまーす」

歩き出すと、視界の隅で、ヒカリのゴスロリドレスと、コトリのショートカットの髪がふぁさふぁさ揺れているのが見えた。
「「く~る~ま~に~き~を~つ~け~て~ね~」」
二人とも胴体をぎこちなくねらせて、その姿は、あたかも体が固い人のやるベリーダンス
非常に不可解というか不気味だ。
 両手がふさがってて手が振れないから、代わりにあんな動作で見送っているんだろうけど……
だから、茶碗と箸くらい置いてくれば良いのにと……これも毎朝のことだった。

家から学校までは1キロ弱といったところで、遅刻ぎりぎりの時刻とはいえ、走れば楽勝だ。

時刻は八時二十二分。

学校までは、あと五分もかからず着くはずだ。
朝のホームルームが始まるのが八時三〇分だから、ちょっとくらいの遅れなら、校門から昇降口までのダッシュでゼロに出来るくらいのタイミング。

ところで、そのとき僕は、考えていた。
そして、思い出していた。

臨死体験についてだ。