僕は人間でないらしく













ある日、メルティオーレと名乗る不審な美少女が現れ,倫太に告げる。 「あなたは、人間ではありません
同じクラスの、通称“バイオレンスJK”狛江さくらと共に倫太は謎の解明に乗り出す。 「人間じゃなければ何なんだ!?
そして明かされる出生の秘密と過去の誘拐事件の真相倫太とさくらの、熱く激しい戦いが、ここに始まる!

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目次

登場人物

【改訂版】<1> バイオレンスJK ~狛江さくらについて~

【改訂版】<2>その後の麗レイコ ~両親の仲が良すぎて子供が疎外感を覚えるというのとは、また別だと思う~

【改訂版】<3>コトリとヒカリ ~友人からは”ゼロ年代的美少女”と評されている叔母二人~

【改訂版】<4>思春期の少女の腕力って意外とハンパない~コトリのジャイアントスイング~

【改訂版】<5>黒い服と白い服 ~ドレスを想像するかもしれないけど、二人とも割とカジュアルな装いでしたよ~

【改訂版】<6>惑わされるな! ~目の前の相手が小芝居を始めたら、だいたいその人は、何かを誤魔化してあなたを煙にまこうとしている~

【改訂版】<7>附帯世界執行官7号 ~いきなりそんな風に名乗られたらムカつくよね。ムカついてどうするかは人によるけど~

【改訂版】<8>雌犬と呼ぶ女、呼ばれる女~再来なら、元祖がまだ生きててもOKなんだけどね~

【改訂版】<9>敗北するメルティオーレ ~もう許してー、なのでございますぅ~

【改訂版】<10>メルと狛江さん ~見下してるのは否定しないらしい~

【改訂版】<11>僕は人間でないらしく ~『天使です』とか、さすがに思ってるままを言うわけにはいかなかった~

【改訂版】<12>いよいよ、僕は人間でないらしく ~だったら、人間じゃなかったら何なんだよって、今回はそんな話~

【改訂版】<13>ハングレ・ハート ~僕、操縦されちゃうの!? なんかエッチな感じでスゲエ嬉しいんですけど~

【改訂版】<14>コトリの独白 ~第三者としてみると引くよね、それ。僕は当事者だから、逆になんとも思ってないけど~

【改訂版】<15>僕がロボットになりまして ~よーし。じゃあ父さんは、変形しちゃうぞお~

【改訂版】<16>戦闘開始 ~『お兄ちゃん』って聞く度に、何か嫌なモノを背負わされちゃったのかなーって思って気分が重くなるんだけど、それって僕の気のせいでしょうか?~

【改訂版】<17>戦う理由 ~今回と次回と次々回は、メルちゃんが語りまくっちゃいますよ!の巻~

【改訂版】<18>想うということ ~メルちゃんが、ちょっといいことを言いますヨの巻~

【改訂版】<19>僕は聞く。そして忘れる ~まだ知るべきことでない真実を、人間の脳は自ら忘れて記憶するのを拒むとか~

【改訂版】<20>街を見下ろす場所で ~想うということ。その2~

【改訂版】<21>噂の現場 ~実は、新しいジャージに慣れるために散歩していたらしい~

【改訂版】<最終話>僕の特別な人だから ~想うということ。その3~


【番外編】やつは人間でないらしく

【番外編】祖母は尋常でないらしく(1)


【番外編】祖母は尋常でないらしく(3)

それにしても何となくモヤモヤしてしまうのは、狛江さんが、お祖母ちゃんの話を信じきってる風だということだ。

僕のお祖母ちゃんということは、狛江さん視点では身内に該当しているだろうことは、想像に難くない。そして狛江さんには、身内限定の性善説みたいなものがある。

だから(それかな?) とも思ったけど……でも実際は、全然違うんじゃないかって気もする。

これまで僕は、お祖母ちゃんの話を、半分以上ウソなんだと思っていた。

ガン◯ムの監督と知り合いとかいうのは、あまりに現実味がなかったし、母さんの『あのババア、適当なことばっか言いやがって……』の枕詞から始まる、お婆ちゃんディスりタイムも少なからず影響していた。

でも今は、ちょっと違う。
以前の様に、疑ってはいない。でも信じているわけでもない。 
言うなら、信じる信じない以前の段階に戻っている。

居間に戻ってくるなり、狛江さんが言った。
「親父が、店でごちそうしたいって言ってるんですけど……」

「嬉しいわあ。さすがリョウタ君は、気が利くわよねえ」お祖母ちゃんは、礼儀としてこういう話を断らない。「やっぱり、和也とは違うわよねえ」そして、父さんをディスることを忘れない。

ささっとテーブルを片付けて、先頭で居間を出た――と思ったら、既に玄関を出て、携帯でタクシーを呼んでるおばあちゃん。

僕はまだ、居間を出てすらいないというのに――肘を突つかれた。

見ると狛江さんが、
(どうしたよ?)って顔で微笑っている。

「なんでもない」
言って、僕は狛江さんの手を握った。

「へ、へー。ニヤニヤしてるから、何かと思ったんだけどー(棒)」

ちょっと赤くなって俯く狛江さんを見ながら、僕は思う。

(狛江さんみたいな娘と付き合えたらいいのにな)
って――そして、はっとなる。

(狛江さんは、僕の恋人なんだ)

きっと一ヶ月前の僕だったら、信じられなかっただろう。
でもこれは、本当のことだ。

いつか、何の話題でだったかは忘れたけど、狛江さんが言ってた。

「そうだったら、おもしれーよな!」
って。

僕も、同じだった。
お祖母ちゃんの話を聞きながら、母さんのお祖母ちゃんディスを聞きながら、心のどこかで思っていた。

(本当だったら、面白いのにな)
って。

ハングレールのことを知って、僕の世界は変わった。

以前までなら、ウソでしかあり得なかったようなことが、本当であってもおかしくない世界に。
狛江さんが僕の恋人になってくれるだなんて、ウソみたいなことが本当になってしまう世界に。
 
だから、僕はもう、お祖母ちゃんの話を疑っていない。
だってこの世界では、ウソよりも、本当のことの方がずっと多いんだから。

またも僕は、ニヤニヤしてたのだろうか?

「まったく、おもしれーよな?」
狛江さんが、顔をくしゃりとさせて、笑った。

やはりというか、当然というか、異常に可愛い笑顔で、改めてドキドキして、今度は僕が赤くなる番で、照れ隠しとか、それで勢いがついたからとかいうわけでもないんだけど、僕は、以前から気になってたことを、お祖母ちゃんに訊いてみることにした。

「ねえお祖母ちゃん。母さんが不良になったのって、ハングレールのことと関係あるの?」
「ううん。育て方を間違えただけ」

その後の五分間、僕は、なんとも言えない気持ちでタクシーを待つしかなかった。
 

【番外編】祖母は尋常でないらしく(2)


半端じゃない……
そして、尋常じゃない……

狛江さんの発したフレーズから、思い当たることがあった。
僕もまた、テレパシー的なアレで、狛江さんに訊いてみた。

(狛江さん。おばあちゃんと、どこで会ったの?)
(『ガラマサ』――
親父に、予約した牛肉引き取って来てくれって頼まれたんだ)
(どうしてそんなところで!?)

『ガラマサ』は、二四時間営業の業務用スーパーで、我が家からは駅を越えて二〇分ほど歩いた場所にある。

電車で一時間もかかる町に住んでるおばあちゃんと狛江さんが、どうしてそんなところで出会うことになったのか、まったく経緯が分からなかった。

でもまあ、それは後で聞けばいいとして……

(まあいいや。狛江さん、おばあちゃんから、どんな話を聞いたの?)
(えーと、大学でガン◯ムの富◯監督と学生運動したりとか……) 

(子供の頃サインを貰った川上◯治が、いかに嫌な人間だったかって話は?)
(あー、聞いた聞いた。でも知らなかったなー。東京ド◯ムが、ジャイア◯ツの攻撃の時だけ空調をイジってホームランが出やすくしてるって噂、本当だったんだな―)

その話が出たということは、おばあちゃんは、少なくとも、持ちネタの三分の一まで話したということになる。
そこからまた学生時代の話に戻って、ガン◯ムの原案を考えたのは自分だと主張しだしたら、三分の二。

僕はまだ聞いたことがないけど、父さんによると、そこから更に三分の一が残っているのだそうだ。
ちなみにその内容は、教えてもらえなかった。

もっと聞きたくて僕がぐずると、 
『知らなくていいよ!』
と、横から母さんが吐き捨てるように言って、その時は、それでおしまい。

ちなみに母さんは、おばあちゃんと仲が悪い。
まあ、言うまでもないことなのかもしれないけど……
 
 「それで美津子さんの教えた内容が元になって、ザンボッ◯3が作られたと。あ、ちょっと家に電話かけてきますね」

狛江さんが中座したタイミングで、おばあちゃんに訊いてみた。
ねえ、おばあちゃん……

「狛江さんのこと、結構、気に入った?」
「気に入ったよ? だって、いい子じゃない」

やっぱり、そうか。
おばあちゃんの『
ガン◯ムの原案を考えたのは自分だ』という主張だけど、ごく稀に『ガン◯ム』が『ザンボッ◯3』に変わる――そしてそれは、おばあちゃんが相手を凄く気に入った場合に限られていた。

「あーあ。レイコも和也くんなんかじゃなくて、リョウタくんと一緒になれば良かったのに……」

出た。
(出ちゃった……おばあちゃんの、父さん下げ)
おばあちゃんは、父さんよりも、狛江さんのお父さんのリョウタくんを気に入っている。

それは母さんの学生時代からずっとだそうで、それが、母さんとおばあちゃんの不和の原因のひとつらしい。

父さんに野球を教えたのは、おばあちゃんだ。
おばあちゃんは、父さんの入ってる少年野球のチームの監督をしていた。

その頃から、おばあちゃんの父さんに対する評価は、かなり低かったんだそうだ。
技術とか才能とは別の――ぶっちゃけ、人間性の部分で。

母さんが、いつか言ってた。
『思うんだけどさ、あのババアがパパを鍛えまくったのは、アタシから引き離すためだったんじゃないかな……野球でスターになれば、アタシ以外の女とくっついて、離れていくんじゃないかって……』

おばあちゃんが、言った。
「でも、さくらちゃんが
倫太くんと結婚すれば、同じだね
と、にこり。

『同じじゃねえよ、ババア』――この場に母さんがいたら、きっとそう言ったに違いないと思うと、なんだか胃が痛くなってくる僕だった。

 

【番外編】祖母は尋常でないらしく(1)

今日は日曜日だ。

風がさわさわ、小鳥がチチチ。
爽やか極まりない朝だった。

母さんは、日ハムとビジターで対戦する父さんを追っかけて北海道だし、ヒカリは最近出来た恋人の家に入り浸りだから、家には来ないだろう。

コトリが来たらウザいので、僕は、散歩に出かけることにした。

それが、間違いだったのかもしれない。

公園で缶コーヒーを飲んでたら、徹夜で遊んだ帰りらしいリア充大学生軍団に絡まれて、その中の非常に豊満な身体を持つ女性が、やたらと僕に胸を押し付けてくるのに対し、

「やめ、やめて……やめろよ! デブ!」

と、思わずストレートな発言をしてしまったところ、女性の彼氏らしき男が激怒し、公園の外に停めてた車に乗り込んだかと思ったら、そのまま柵を破壊し公園の中にまで乗り込んできて、推定時速30キロ程度のスピードで、僕は跳ねられてしまった。

朦朧とした意識で、

「どうする、これ」「まだ生きてるべ」「捨てるか」「山だな」「山だな」

などといった会話を聞きながら車に載せられ、山に運ばれ、県境になってる辺りの崖から、

「「「「「ばいば~い」」」」」

と捨てられてゴロンゴロンと転がり落ちる途中で気を失い、崖底近くの木の枝に引っかかった状態で意識を取り戻したら、もう夕方になっていた。

「いてててて……ただいまー」

家に帰り、誰も居ないはずだけど、一応あいさつして中に入ると、狛江さんがいた。
まあ、それはいい。

狛江さんに 家の鍵を渡したりした憶えも無いんだけど、まあ、それもいいだろう。
だって、狛江さんは僕の彼女なんだし。

問題は……

「お、おかえりー」
狛江さんの声に含まれた緊張と、

「……お帰り」
彼女と、向き合ってソファーに座っている人だった。

その人は、学生時代の母さんをガラスの灰皿で殴りつけてKOしたり、あるいは、プロ入団後3年連続で打率8割を記録し天狗になっていた父さんを三球勝負で破り、野球への初心を取り戻させた人でもあった。

その人は、僕の……

「おばあちゃん、来てたの!?」
「おお。きたよお。倫ちゃん」

……おばあちゃんなのだった。

<<すげえな、三上くんのばあちゃん>>

テレパシー的なアレで、狛江さんが話しかけてきた。
前回の戦闘の後から、変身しなくても使える様になった能力だ。

<<半端ねえな。尋常じゃねえよ>>

【番外編】やつは人間でないらしく

スェーデン人だと思ってた母が、実はフィンランド人だったと知ったのは、16歳の時だった。
学年でいうと、高校1年の3月30日のことだ。

半年ぶりに会った姉が
『え、オマエ知らなかったの?』
的な表情とともに漏らしたのである。

姉は3月31日生まれで、俺は4月1日生まれだ。

4月1日生まれということは、学年で一番最初に生まれたということになる。
正直、中学2年くらいまでは、そのアドバンテージでかなり楽をさせてもらったし、そこまでで稼いだポイントと勢いで、中学3年以降も楽勝だった。 

だから、わかるのだ。
 3月31日生まれ、すなわち学年で最後に生まれるということが、どれだけ不利なことなのかが。

姉とは、両親が離婚した小学3年生の時以来、別れて暮らしている。
離婚の原因は、父が脱サラしてラーメン屋を開きたいなどと言い始めたからだ。

「父さんは、地元でも有名なバカ学校出身の低能で、暴走族のメンバーだったくせに高校を中退もせずのうのうとと卒業出来たくらいの気合の足りない根性なしだったんだから、人に使われる立場でいるのが一番の得策だよ。大体、30歳を過ぎてラーメン屋で修行を始めるとか、これまでの職歴を捨てるとか大変に決まってるし、そんなバカの子供でいさせられる僕たちの方が、その何倍も大変だ」 

などと、正論ではあるが、だからどうしたとデコピンしてやりたくなるウザイ主張をわめいていた当時の俺が、両親を面倒くさい気分にさせ、離婚への意思を固めさせた可能性は、非常に高いと思う。

両親が離婚して以降も、姉とは時々会っていた。
そしてある時から、会うたびに不良少女的な言動と顔つきになっていく姉を見るたび、僕、おっと俺は、3月31日生まれの困難さに思いを馳せずにはいられなかったのだった。


そして、今日――高校1年の3月30日。
姉と同居して、彼女と同じ学校に通うことになった僕を、姉とぼ……俺の共通の幼なじみたちが、決してささやかとはいえないパーティーで歓迎してくれた。

場所は、姉の彼氏の家。
なんと、姉に彼氏ができていたのである。

姉は、金髪碧眼の美少女だ。
だから異性同性問わずにモテても、不思議ではない。

しかし、それにしても……僕の心のなかに生まれた抵抗感は、決して、姉を取られたことへの嫉妬心からなどではない。あくまで、不可解な事象に対する、疑念から生まれたものなのだと断言しよう。

だが、それなのに……現実は無慈悲で残酷だ。

姉の恋人の父親は大リーガーで、日本にはいない。
父親に伴って渡米した母親も、向こうで通いだした総合格闘技の道場でスカウトされ、世界最大の格闘技興行として有名な某イベントのメインイベンターとなり、無敵のチャンピオンとして王座防衛の記録を作り続けているのだという。

パーティーが始まってしばらくたち、姉が席を離れるまで、俺は会場となってる家が、ついさっき紹介された、頼りない、自分のことを『僕』だなんて呼ぶ、可愛い顔をしたオカマ野郎のものだというくらいの認識しかしていなかった。

姉と、そのホモの女役との関係性については、まったくのノーチェックだったのだ。
それでもパーティの話題が途切れた時に、

「ねえ、三上くんって、どういう人なの?」

と訊いてみたのは、姉の後を追うように、ともとれるタイミングで彼が席を離れたことに、違和感を感じたからなのかもしれない。

僕の問に、幼なじみたちは顔を見合わせて笑顔を見せた。
はにかんだような、答えは簡単なのに、それをどうやって伝えたらいいのかに迷ってる、といった表情だった。

代表して答えてくれたのは、幼なじみの中でも1番のイケメンの蒼士君だ。

蒼士君が、話してくれた。
彼――三原倫太君の家族の事や、彼が学校の生徒会で副会長を務めていること。
それから……

「ちょっと、トイレ」

現実は、無慈悲で残酷で容赦無い。
それから目を逸そうとする者に、手を緩めること無く追い打ちを仕掛けてくる。

トイレの前で、僕は聞いた。

誰かがえづく声と、おそらくその背中をさすっているのだろう布同士の摩擦音。
それに続く、トイレの中の2人の会話。

「大丈夫?」
「うん……ぜんぜん平気」
「頑張り過ぎないでね? 生・徒・会・長」
「やめろってば、その呼び方」
「始業式の挨拶、期待してるから」
「おう……そっちこそ、入学式のスピーチ、失敗するなよな」
「ふふ……わかってるよ。会長」
「だから、その呼び方、やめろって」
「じゃあ……さくら?」
「それも……変な気持ちに、なっちゃうから」
「好きだよ。さくら」
「ばか……やめろって……んぅ、」

更にそれに続く、ギャルゲから引っこ抜いた様な音声。

「ん…んく、ちゅ……ん。あは、あ……好き……さくらも好き……倫太くん、好きぃ」

パーティーに戻った僕は、どんな顔をしてたのだろう?
幼なじみの中で、一番の優等生で美人の美玲さんが、顔を近づけて言った。

「彼は、人間じゃないから」

三原輪太――奴は、人間じゃない。
母の国籍より、それは、僕には、ずっと重要な情報となったのだった。

<了>

今後の予定について

この作品の今後ですが、6月から第2話を公開したいと思います。
1ヶ月かけてブログ連載して、その後、改稿したものを電子書籍化できればと思っています。

ベースになるのは、現在【改訂版】となっているララノコン応募バージョンで、最初に公開したバージョンについては、第2話の連載開始のタイミングで、非公開にする予定です。

 6月までは、新規の設定や、番外編を不定期に掲載していくつもりですので、よろしくお付き合いください。

第2話では、狛江さんの家族構成が明らかになる予定です。
ではでは~

ララノコンの結果について

なんか、あちこちでアレな感じになってますが……

私自身は、以下二点の様な感情を抱いております。


1.なんか突然現われたオジサンが審査とかしてるんだけど、いきなり出てきてオマエなんなの?
  こっちがコンテストの顔って認識してるのはあなたじゃなくてララノコンちゃんなんだけど……

2.大賞受賞者の作品はともかく、プロフィールがなあ……
  なんか、みんながララノコンに注いでた熱が、全部、この人のメルマガの販促ツールにされちゃう感じがしてモヤモヤする。コンテストの結果を自分の仕事のプレゼン材料にするのはいいけど、ラノベ以外の商売に繋げられるのは、どうも……

まあ、こんなの理屈で言ったら簡単に論破されちゃうようなものに過ぎなくて、だから感情だって断ってるわけなんですが、だからこそ、説得はされても納得するのは難しいんでしょうね←こういうのをこじらせているという。

一言でまとめるなら
「結果として、アキバなんとかが受賞するより、ずっと出来レースっぽい感じになっちゃったね」
ってところでしょうか。

そんな感じ(シュッ)
ではでは~

 

1000UU突破

昨日、1000UUを突破しました。
ブログ開始から、100日ちょっとでの達成です。 

それと最近は、UUとPVが、あー最後まで読んでもらてるんだなーって感じのちょうど良い バランスになっていて、それも嬉しい限りです。

読んでくださった皆さん、ありがとうございます。

ララノコンで受賞出来たか出来なかったかは別として、続編も公開するつもりです。

その時はまた、よろしくお願いいたします。

ではでは〜 

この作品で目指したこと

ちょっとエッセイめいたというか、いい機会なので、メモ的に書いておきたいと思います。

私は、三人の先生の小説をお手本にしています。

一人目は、小林信彦先生。
二人目は、舞城王太郎先生。
三人目は、純文学の某先生。 

特に小林信彦先生の「おとなの時間」という短編みたいな作品を書けないか、これまで試行錯誤してきました。
 
「おとなの時間」は、おそらく夏目漱石の「吾輩は猫である」を先祖に持つ、特にこれといったストーリーも無いのに何故か面白い、そういう小説です。

「おとなの時間」が「吾輩は猫である」から受け継いでいるのは(これも私見で、おそらくとしか言えませんが)落語的想像力と、それと不可分になった語り口です。

キャラも世界観も、この二つの中に含まれてると言っても良いかもしれません。

これは自惚れですが「僕は人間でないらしく」は、上記の作品の夜叉孫の従兄弟くらいにはなれたのではないかと思っています。

ただし、こういった作品の特徴として、非常的に微温的というか、コンテストという点取りゲームにおいては、弱火というか、善戦はするがなにか物足りない、ひところの(現在もでしょうか?)サッカー日本代表チームのような受け取り方をされても、仕方がないところがあります。

でもまあ、15分程度の暇つぶしとしては、悪くない作品だと思います。
読んでいただいた方に、可愛がっていただけたなら幸いです。

ではでは~



 

【改訂版】<最終話>僕の特別な人だから ~想うということ。その3~


あの時のお礼を言いたかったんだけどさ。どう話しかけたらいいのかわからなくて――ずっと、言えなかったんだ」

「気にしないでよ。そんなの。それに、お礼なんて『あの時』の握手で――」
『十分だったのに』と言いかけて、

(ええっ………………!?)

僕は、言葉を失う。

僕の中の狛江さんは、相手を見下ろしたり、三白眼で睨んだり、まっすぐ見つめたりで――要するにいつだって自信満満だ。

それなのに、いま僕を見ている狛江さんは――
「あの……さ」
――ちょっと上目遣いになっていた。

あまりに弱気な感じで、自信なさげな感じで、
僕の反応を窺ってるみたいで、
あまりに意外というか、違和感がありすぎて……

「あのさっ」言い直して、深く息を吐いて
「あの、さ……」もういっかい言い直して、それから狛江さんは言った。

「三上くんが初めてだったんだ。ああいうことする人」
「初めてって……自転車を投げたこと?

「まあ……そうなんけど、それだけじゃないっていうか……でもやっぱりそうなんだけど、違うっていうか……だから!違うんだ!三上くんは!

違うって?

「これまで、自分が喧嘩してると、横から口を挟んでくる男って、結構いたんだ。逃げろとか、俺が代わりに喧嘩するとか、そういうのは……いっぱいいたんだ」

確かに、僕も腕力に自信があったら、そうしてたかもしれない。

「でもさ……自転車投げて来た奴なんて、一人もいなかった。なんていうかさ、自分の予想を超えるっていうか、自分じゃ思いつかないようなことをしてきたのって、三上くんが初めてだったんだ」

何も考えてないだけだったんだけどね。

「それで……流石だなって。やっぱり違うなっ……て」

え?
流石って……
やっぱりって……
僕たち、あの時が初対面のはずでは?

「自分は……『麗レイコの生まれ変わり』って呼ばれてて……まあ、レイコさんは死んでないんだけど……大変申し訳なく思ってるんだけど……そう呼ばれて、自分は嬉しく思ってるわけでさ。三上くんは『レイコさん』の息子なわけで……気になってたんだ。レイコさんの息子が、どんなヤツなのか……」

じゃあ、あの喧嘩の時には、既に僕のことを認識していたわけだ。

「それで、入学式の日も注目してて、そしたら、あの、チラ見したりしてたんだけど、その……いや、あの、あれなんだけど、ちょっと……よくわからなくって

ああ――いいから!
自分が弱火というか、陰影が少ないというか、ぼんやりとした印象しか与えられないのは、ちゃんと自覚してるから!

「わからなくて……」

言葉を濁して言ってくれただけで十分だから!
だから――狛江さん。

「本当に、よくわからなくて……」

そんなに済まなさそうな顔しなくていいから!

「それで……さ。家に帰って、どういうやつなんだろう?って考えながら散歩してたら喧嘩になって、そしたら……そしたら……ほら、」

狛江さんが指差す方を、僕は見た。
そこは、流れる雲の隙間に、星が瞬く夜空

「空から自転車が降ってきた」

再び地上を見ると――
ニヤリとエヘヘの中間ぐらいの顔で笑う狛江さん。

首から、お守り袋を提げている。
母さんに渡されて、中に原稿用紙を入れた、あれだ。

あの原稿用紙に、狛江さんは、なんて書いたんだろう?

僕は、こう書いた――

よくわからない
特別な人
ずっと一緒にいたい

――でも、それはきっと、もっと単純なことなんだ。

狛江さんは、別名『バイオレンスJK』の超美少女だ。
高校入学から今日までで、百七十六人が告白して、ふられている。

一方の僕はといえば、ロボットで、人間ではないらしくて、
そして――

「好きだよ。狛江さん」
「…………あ」

僕の告白に、狛江さんはジャージの襟で顔の下半分を隠すと、目だけで右を見て、左を見て、また右を見てから僕を見て、それから……手を差し出した。

「…………よろしく」

――百七十七人目には、ならずに済んだらしかった。

<終わり>

【改訂版】<21>噂の現場 ~実は、新しいジャージに慣れるために散歩していたらしい~

狛江さんには、こんながある。


『狛江さんって、入学式の帰りに、格闘技をやってる大学生五人と喧嘩して、ボコボコにしたらしいよ』

●●

概ね正しいけど、この噂には、ふたつ間違いがある
ひとつは、狛江さんは入学式の帰りじゃなかった。
それからもうひとつ、相手は五人じゃなくて十人

何故そんな指摘が出来るかといえば、その現場に僕もいたからだ


その喧嘩を、僕は歩道橋の上から目撃した。

入学式の日。
時刻はもう夕方に近くて、僕はいったん家に帰ってからの外出だったし、狛江さんも制服と学校指定のジャージを着ていたけど、おそらく僕と同じだったんじゃないかと思う。

僕は母さんの命令で、手癖の悪い従兄弟が盗んできた自転車を、元々あった場所に戻しに行くところだった。

そこで目撃した――彼女の喧嘩を。

オレンジ色のジャージを着た金髪の少女が、デカい男たちに囲まれていた。
一見しただけでは、何が起こってるのかわからない光景だった。

言葉も動きも、ちょうど途切れた瞬間だったらしい。
そこにいる誰もが――何もかもが静止していた。
もう少しそのままの状態が続いていたら、僕は、そこに幾何学的な美しささえ見出していたかもしれない。

それが、一瞬一変した。

とととと、と一歩、二歩、三歩……
少女の正面に立ってた男が、突然、後ろ歩きを始めていた。
四歩、五歩………そして九歩目で、仰向けに倒れた

「がはぁあっ!歯が!歯が!はがががっがががが……」

赤ちゃんの寝返りみたいに身を捩らせる男の、口元は真っ赤に汚れている。

だ……)

それでもまだ、僕は、自分が何を見ているのか理解出来ないでいた。
でもそれも、次の一瞬までだった。

「「………………っ!!!」」

少女の両側にいた二人が、その場に正座したかと思ったら、鼻を押さえて、そのまま動かなくなった。
彼らの指の間から垂れる――赤。
血の赤。
        
この時点で、ようやく僕も理解した。

男の一人は歯を折られ、二人は鼻を潰されたのだと。
それが、少女の攻撃によるものなのだと。
それからもう一つ。

自分が、何を見ているのか――喧嘩を、見ているのだと。
少女一人対男十人の喧嘩を、自分は見ているのだと。

理解した、次の瞬間、

「逃げろ!」

決心も、その前の葛藤も無く、僕は叫んでいた
叫びながら、同時に自転車から降り、そのまま自転車を、歩道橋の下に向かって放り投げていた

男たちの誰かに当たって、少女が逃げるきっかけが出来れば良かったし、運が良ければ、そのまま乗って逃げて貰っても良かった。

でも彼女は、
「サンキュー!!」
ジャンプして空中で自転車のフレームを掴むと、そのまま着地がてらに、地上に残された男たちに殴りかかっていった――自転車武器に。

「うらぁああああああっ!!はぁあぅあっはあああぁああああっ!!!!!!」

喧嘩は、五分もかからず終わった
男たちにしてみれば、喧嘩していた時間より、その後で泣き声をあげながら地面に蹲ってた時間の方が長かったかもしれない。

全てが終わった後で――
「助かったよ。ありがとうね」
――言いながら、握手を求めてくる女の子。

その手を握りながら、ようやく僕は気付いた。
彼女が、あの『狛江さくら』だということに。

ほんの数時間前――入学式でも、その後の教室でも、彼女は注目を集めまくっていた。
バイオレンスJC』なんて異名や噂の武勇伝が全く、何の手掛かりにもならないくらいの、単純に凄い美少女がそこにいた。

学校で見たあの美少女と、いま握手している目の前の彼女――よく見れば美しさは変わらないのに、まるで別人みたいだった。

あの時、狛江さんは、僕が同じクラスの男子だって気付いていたんだろうか?
「じゃあね」とか「またね」とかいった言葉は無しに、僕らは別れた。

彼女の手は冷たくて、張りがあって、滑らかで、まるでアイスクリームの詰まった水風船みたいで――まあ、そんなよくわからない喩えは、どうでもいい

自転車でその場を離れて、一〇分位経ってまた戻ったら、当然だけど、彼女はもういなかった。
(当然か……)
まだ呻き声をあげてる男たちを避けて、僕は、歩道橋の下に自転車を停めた。
従兄弟が自転車を盗んだのは、この場所からだった。

そして僕は、元々、この場所に自転車を置いて帰るためやってに来たのだ。

(何やってんだ、僕……)

帰り道、僕は思っていた。

(入学式の彼女と、さっき喧嘩してた彼女――明日学校に来るのは、どっちの彼女なんだろう?)

【改訂版】<20>街を見下ろす場所で ~想うということ。その2~

目が覚めた。携帯の時計を見た。
時刻は午後八時二十分

下の階に降りると、キッチンで母さんがテレビを見てた。
コトリとヒカリの姿はない。
夕食を終えて、自分の部屋に帰ったんだろう。

父さんは?」
「まだ仕事。ごはん食べる?」
「ちょっと、散歩に行ってから食べる」
「ああ、そう」お茶を啜って「行ってらっしゃい」

そっけない態度に、僕は、ちょっと、ほっとする。


とりあえず、通学路にあるコンビニに向かった。

バカみたいな顔の(しかも悪目立ちする)店員がいるせいで、近隣の中高生から『バカの店』とストレートな呼び名を付けられている店だ。

その『バカの店』を、いま出る人がいた。

右を見て、左を見て、ポケットに手を突っ込んで歩き出すオレンジのジャージ。
狛江さんだ。

ちょっと迷って僕は……
すぐに声をかけるのは止めて、狛江さんの後をつけることにした

●●

家に電話をかけた。

「母さん?僕だけど、少し帰りが遅くなりそう……うん。夕飯は、帰ってから食べる……僕の居場所は、スマホのGPSで分かるはずだから……え?『なんだそりゃ?』って、母さんにも使い方説明……そうだね。使い方は父さんに聞いて。じゃあね。心配かけてごめ……あ、切れた」

●●●

通りかかったコンビニの時計――歩き出してから、もう一時間近くが経っていた。

●●●●

狛江さんは、まだ歩くのをやめない。

●●●●●

「ちょ、ちょっと狛江さん!」
「あ、あれ!?自分、どうしたのよ?」
「どうしたもこうしたも……狛江さんの後を追ってきたんだよ」
「え?どこから?」
「国道のコンビニ――『バカの店』を出たとこから」
「『バカの店』から!?って、すげえっていうか……マジで尾行じゃん。相手が自分だったからいいけど、それ、人によってはキモいと思われるよ。気をつけた方がいいよ。絶対!」
「だって狛江さん、全然、止まらないんだもん!狛江さんが立ち止まったら声をかけようと思ったら……何キロ歩くんだよ。ここってもう、隣の県だよ」
「ええ!?まだ県は越えてないよ!」
「い~え、越えてます!ほら、あそこの自販機が県境

と、僕は見下ろす景色の一点を指さす。
ここは、隣の県との間にある山の、頂上近くの展望台だ。

「へへぇ……」
「な、何?なんだよ狛江さん」
「自分、ちょっとテンション高くない?
「狛江さんこそ……」
「うん。自分、確かにね。ちょっと興奮してるかも」

景色を切り取るように、指で四角を作って、狛江さんは見るからに上機嫌だ。
僕も、狛江さんの隣にいるだけで鼓動が早くなる。

「自分たち、あそこで戦ったんだよな~」
「うん……狛江さん、がんばったよね」
「へへへ……三上くんも、お疲れ様」

僕も、狛江さんを真似して指で四角を作ってみた。
メルが言ってたことを、思い出す。

『壊れた何かについて誰かが想えば――想う人が多ければ多いほど早く『観念』は修復されるものなんです』

昼間、僕らが戦ってから、まだ十時間ちょっとしか経っていない。
もし『妖精眼』を着けてたら、この景色は、どんな風に見えるだろう?
メルの言う通りなら、僕たちの戦いで焼かれたり、潰されたりした木々や家々の『観念』は、既に修復され始めているはずだ。

指で作った四角を、動かしてみる。
指で切り取られた景色が、流れていく。
ふと、思った。

想うって、どういうことなんだろう?)

(一体どんな行為が、この景色の『観念』を修復させるんだろう?)

(わからない)

って。

気づくと、狛江さんが、ニヤニヤ笑いで見てた。

「へへへ~。三上くん、すげえマジな顔してんね」
「まあね」どや顔で僕が応えると、
「くひひひひひひ。なんだよ、その顔~」狛江さんが、顔をくしゃっとさせて笑った。

それは、初めて見る感じの笑顔と笑い声で、僕は、なんだか得したような気持ちになりながらも、ちょっと戸惑う。

「狛江さんは、よくここに来るの?」
「いや、全然。今日はさ、ほら、なんか興奮してるから、歩いて落ち着こうと思って!またがんばろうな!三上くん」
「うんっ」

そして――

あの時は、ありがとう
唐突に言って、真面目な顔になった。

あの時というのは、きっと『あの時』のことなんだろう。

【改訂版】<19>僕は聞く。そして忘れる ~まだ知るべきことでない真実を、人間の脳は自ら忘れて記憶するのを拒むとか~

母さんの特技のひとつに、車の調達がある。

どんな時間でも、どんな場所にいても、電話ひとつで車を貸してくれる仲間が、母さんにはいる。
そうやって調達した車で、まずは狛江さんを家まで送って、それから家に帰った。

その間、後部座席の僕が目を覚ましたのは、狛江さんを降ろして、再び出発したときくらいだった。『狛江亮太』『さくら』。表札には、その二つの名前しかなかった。

夢の中で、誰かが喋っていた。


僕は聞く。


お父様とは、初対面のはずでしたよね?
お父様がロボットになったとき、わたくしみたいなモノは、訪ねて来ませんでしたよね?

当然です。ロボットとはいっても、それでも人間の範疇をはみ出すわけではありません。

倫太さんは、違います。
ロボットだから、ではありません。
ロボットどころではないから、わたくしが遣わされたのです。

本来のハングレールに、男性はいなかったはずです。
行く先々の星で男性を調達し、子を増やす。
それが、ハングレールの繁殖方法――違いますか?お母さん。
二億年の歴史で、ハングレールの男性は、わずか三人しか生まれていない。

だからなのでしょう?

三人のハングレール男性が操縦を任せたのは、ハングレール以外の女性に対してのみ。
ハングレールの女性には、決して操縦を許していません。

だからあなたでもあなたの妹さん方にでもなく、地球人の女性に、倫太さんの操縦を任せたのでしょう?

注視すべきと考えているのですよ。

観念獣から進化した、いわばイレギュラーな存在であるあなたがたハングレールの中でも、さらにイレギュラーな存在である、倫太さんをね。

わたくし?

わたくしは、附帯世界執行官七号メルティオーレ
ちなみに七号というのは、設定された態度の種類を表すコードであり、決して、わたくしの個体番号を示すものではありません。個体としての区別を適用するなら、いまのわたくしと、いまのわたくしと、いまのわたくしは、すでに別人といえるでしょう……喩えではありません。実際に、まったく別のわたくしと入れ替わっているのです。

ためしに、個体ごとに顔色を変えてみましょうか?
ほら……ああ、すみません。酔いましたか?
どこかに車を停めて、吐いちゃいますか?
ああ、そうですか。我慢できますか。

ちなみにわたくし、倫太さんに会いに行ったとき、不注意でふたつの個体を同時に向かわせてしまいまして、それで多少の混乱を招いてしまったようです。

まあ、小芝居でごまかしましたけど。

わたくしたちのバックグラウンドについて語ることは、現時点では、お互いに不利益となりかねません。よって、今後もその件につきまして倫太さんからの突っ込みが入った場合には、すっとぼける方向で行く所存でございますので、どうかご協力をお願いいたします」


●●

僕は忘れる。

【改訂版】<18>想うということ ~メルちゃんが、ちょっといいことを言いますヨの巻~

B回線では狛江さんが、励ます僕の言葉に、めいっぱいの笑顔で応えてくれている。

「うん、ありがとう!自分、がんばるから!」
「狛江さん。もう少しだからね!僕もがんばるから!」
「うん。うん………うん!お兄ちゃん溶解液!!

がんばるとは言ったけど、実際には、僕にはがんばりようがない。
身体は狛江さんの操作のまま動いてるだけで、僕ががんばってるわけじゃない。

「ごめん!三上くん。避けられなかった!」

攻撃を受ければ痛みも感じるけど、それはただの情報で、ダメージに合わせてパラメータを再設定すれば、身体は、ちゃんと動いてくれる。

「僕は大丈夫。それより狛江さん、操縦桿に衝撃来なかった?」
「全然平気っ!」

僕は、何も、苦しくなんてない。

ステータスを見れば、狛江さんの左の人差し指が、亜脱臼で使い物にならなくなってるのが分かる。

息を切らすのも、コクピットを揺らす衝撃に歯を食いしばるのも、狛江さんだけだ。

僕は、医療用ナノマシンを狛江さんのスーツで合成。彼女の体内に注入する。

「ちょっと、チクッとするよ」
「ん、ああ……おう!チクっとした」

僕は、まったく、がんばってなんていない。

「すげー楽になった。ありがとうね!」

ただ、狛江さんにがんばってほしいって思ってる……それだけだ。

「それで充分なんじゃないですかねえ……ところで、さっきから足下を気にされてるようですけど、大丈夫ですよ――『観念』は、壊れてもすぐ直ります。観念獣に喰らわれない限り

ロボットである僕は、観念獣と同じ、観念の世界の存在になって戦っている。
だから、足下の家を踏んだりしても『モノ』である家は、壊れない。

だけど『観念』は別だ。

僕に踏みつけられた家の『観念』は破壊される
そのたび、僕の足にも痛みが走る。

僕と父さんが、観念獣を攻撃する。
光や金属や粘液の銃弾を発射。

観念獣の体表に、小さな光が瞬く。
着弾の証だ。

瞬きに一瞬遅れて、僕らの攻撃が通った後の空間に、滲んだような軌跡が現れる。
そこから、さらに一瞬遅れて、音がする。

発射音。
着弾音。
爆発音。

観念獣の体表から剥がれ落ちる、瓦礫みたいな体組織
汚泥めいた体液

跳んだり、降りかかってきたりしたそれらに、潰され、溶かされる家々
地表を沸きたせる化学反応
燃え上がる木々。

「ねえ、メル。本当に、大丈夫なのかな?」
「大丈夫ですよ。言ったでしょう?これは『観念』なんです。壊れたって、いずれは元通りになるものなんですよ」
「だから……本当に、元通りになるの?」
「なりますとも――壊れた何かについて誰かが想えば――想う人が多ければ多いほど早く『観念』は修復されるものなんです」
「本当に?」
「本当ですよ――いいですか?この世界にあるどんな存在も、この世界にある限り、案外、誰かに想われているものなんですよ。どんなに詰まらないと思われてるような、人やモノだとしてもね」
「そういうものなの?」
「そういうものなんですよ」

計算が正しいなら、戦闘は、次の攻撃で終わるはずだった。

「お兄ちゃんブーメラン!」
「スペース竹槍!」

観念獣が爆発四散する――計算した数値に、観測した数値が次々一致していく。
それを見ながら、しゃがみこみそうになるのを堪える狛江さん――力の入らない体幹を、下腿部の緊張でなんとか支えている。

「った……やった。は、はは、は……はぁ…はぁ……」

僕は、母さんと父さんからの通信を、しばらくは繋がないでおくことにした。
父さんも母さんも、まったく息を切らしていなかった。

狛江さんが息を整えるのを待ちながら、
お疲れ様。
がんばったね。
僕は、そう、彼女に伝えたはずだった。

僕の言葉に応えて、サムアップする狛江さんの笑顔を覚えている。

でも、そこまでだ。

そこで僕の記憶の連続性は、いったん途切れる。

簡単にいうと、寝落ちしてしまった。

案外、僕も疲れていたのかもしれない。

【改訂版】<17>戦う理由 ~今回と次回と次々回は、メルちゃんが語りまくっちゃいますよ!の巻~

「文字通り、観念の獣ですよ」
「それじゃ、そのまんますぎるよ」
「じゃあ倫太さん。観念って、なんだと思います?」
「イデア……何かについての…『考え』?」

「そうです。『考え』のまとまり。それが、観念獣の喰らう『観念』です。星から星へと渡り『観念』を食らいつくして巡る、『モノ』としての身体を持たない観念階層の怪物――それが、観念獣です」

「『考え』を……『観念』を、喰らう?」

「例えば、ビルを建てようとする。こんなビルを建てようと考える。設計図を描く。工事を計画する――そんな『考え』がまとまって『観念』になります。その後、実際に工事をして、ビルを完成させる。そうしたら『観念』は、消え去ってしまうでしょうか?」

消え去らないんだろうな……この話の流れだと。

「『観念』は、実際の『モノ』と共にあり続けます。『観念』は『モノ』の変化により書き換えられ、『モノ』は『観念』に従って、姿を維持し続けます。文明の進んだ星では、『観念』を書き換えることによって『モノ』を変化させるなんて技術が普通にあるんですよ?」

「うん…それで?」
N回線で、父さんからパイロットのバイタル管理のレクチャーを受けながら、話の続きを促す。

「では仮に『観念』が消え去り『モノ』だけが残ったとしたら、どうなると思いますか?」

僕の答えを、メルは待たなかった。

『魔』が生まれます――『魔』は善悪の判断の対象ではありません。問題は『観念』による支配が不可能な『モノ』が、そこにあるということです。地球レベルの文明ではまだ問題にならないでしょうけど……」

「じゃあ、別に放っておいても……観念獣と戦ったりしなくても、いいんじゃない?」

「そうはいきません。『観念』で『モノ』を操作するレベルの文明にとって『魔』の存在は、致命的な瑕疵となりかねないんですから……

昔、妖精眼が広まっていなかったころ、文明が進んで、いざ『観念』で『モノ』を操作する段階になったら、すでに星中の『観念』が観念獣に食い荒らされていて、それ以上の発展が出来なくなってしまったなんて悲劇が、結構あったんです。

さっき、お母様が言ってらしたでしょう?
『妖精眼は、どこの星にもある』って。

あれはですね、そういう悲劇を避けるために、妖精眼を配った人がいたってことなんですよ」

「じゃあ観念獣を放っておいたら……いまの時点では、どんな問題があるの?」

「みんなが、少しづつ不幸になります。少しづつ、少しづつ……ただあるだけの『モノ』が増えていき、少しづつ、少しづつ……誰の上にも不幸が降りかかっていく」

まるで、いま見たままを語ってるような声だった。
(メルって、何者なんだろう?)
疑問を、口にしたわけでもないんだけど――

「わたくしは、附帯世界執行官7号(サブセツトドミネーターナンバー7)メルティオーレ。ちなみに7号というのは、設定された態度の種類を表すコードであり、決して、私の個体番号を示すものではありません」

――『附帯世界執行官7号』というのが何なのかはわからないのは変わらずだけど、とにかくまあ、そういう答えが返ってきた。

【改訂版】<16>戦闘開始 ~『お兄ちゃん』って聞く度に、何か嫌なモノを背負わされちゃったのかなーって思って気分が重くなるんだけど、それって僕の気のせいでしょうか?~

父さんから送られてきたデータだと、観念獣との戦いでは、接近戦は少ないみたいだ。
ほとんどの戦闘は、500メートル以上離れての攻防だけで決着がついている。

ちなみに僕が変身したこのロボットだけど、マニュアルによると、こんな名前らしい。

『お兄ちゃんロボ』

さっきのコトリの独白を、思い出さざるを得ない名前だった。
しかし、憂鬱になってる暇はない。

既に、観念獣の攻撃が始まっていた。
観念獣の弾丸とも光線ともつかない攻撃は、それを放つ本体と同じく、形容しがたい外見をしていた。

色も、形も不定形。

あえて喩えるなら、パレットで暗いというか汚い色の絵の具を何色も混ぜあわせているところへ更に新しい絵の具を足し続け&混ぜ続けているような、終わらない色と形の変化――物とも現象ともつかない何か。

そんな何かが、超スピードでこちらに向かってくる。
しかし一体、あれを何と呼べばいいのか……

A回線で、母さんが叫んだ。

「来たよ!ウンコ爆弾!パパは平気だけど倫太は出来るだけ避けて!」

そうか。
そういうセンスでいいんだ……

「お兄ちゃんミサイル!お兄ちゃん破壊銃――当たった!お兄ちゃんビーム!お兄ちゃんフラッシュ!」

観念獣の攻撃を避けながら、狛江さんと僕は矢継ぎ早に攻撃を繰り出す。

一方、母さんたちはというと……

「デッパカッター!」

ぶ厚い装甲で敵の攻撃を跳ね返しつつ、威力の大きな、でも発射まで時間のかかる兵器で攻撃、というパターンだった。

僕たちの
「お兄ちゃんフィンガーミサイル――親指!人差し指!中指!薬指!小指!」
と、父さんたちの
「ギャラクシー・トルエン!」
で比べてみると、敵に与えるダメージは、見た目的にもデータ的にも父さんたちの方が大きいし、効率の面ではまったく比較にならなかった。

まあ、いいか。
こっちは初心者だ。

FE回線というのを見つけて、僕は話しかける。


「ねえ、聞こえる?そこにいるんだろ……メル


「はいはい、聞こえてますよ。それにしてもここって、何のための場所なんですかねえ?」
「怪我人を見つけて、保護したりするために使うみたい」
「ふうん。確かに、全然ゆれたりしませんもんねえ」

メルが寝ころがっているのは、コクピットから10メートルほど下にある、四畳半くらいの広さのスペースだ。

僕がロボットへの変身を終えたときには、メルは既にそこにいた。

ロボットにメルが忍び込んでるのを、知ってるのは僕だけだ。
狛江さんは知らないし、この会話も、僕とメルにしか聞こえていない

気になってたことを、訊ねてみた。

いまここで、彼女から聞かなければいけない気がする問いだった。
いまここで、彼女からしか聞けない気がする問いだった。

僕は訊いた。

「メル。観念獣って、なんなの?」

【改訂版】<15>僕がロボットになりまして ~よーし。じゃあ父さんは、変形しちゃうぞお~

部屋の反対側を見ると、狛江さんは、たいそうスラスラと原稿用紙の升目を埋めてるみたいだった。きっと狛江さんは、頭のなかにあるものを、そのまま文章にできるタイプの人なんだろう。

僕が同じことをしたら、無駄に凝ったレトリックが頻発する、結局、読み終えても何が言いたいのか分らない文章になってしまうに違いなかった。

最終的に、僕が三分かけて書き上げたのは、三行の箇条書きだった。
僕も狛江さんも、原稿用紙をお守り袋に入れて、首から下げた。

「じゃ、いいかな?」

母さんが、窓の外を指さした。
気づくと、僕の両腕が、消えていた。

「倫太は、もうロボットに変身はじまってるみたいね。
ほら、さくらちゃん。あっちあっち。あっち指さして……」
「えっ、こう…ですか?」

母さんに指示されるまま、狛江さんも窓の外を指さす。
その先にあるのは、県境の山だ。

観念獣が立っている場所とは、住宅街を挟んで、二、三キロ離れている。
目を懲らすとそこに、どう見てもロボット、としか形容しようのないが浮かんでいた。

続いて同じ場所に、が出現する。

(ってことは?)

視線を自分の身体に戻すと、だけでなくもなくなっていた。
胴体も、おへそのあたりまで、もう消えていた。
僕の身体がぜんぶ消えさるまで、三十秒もかからなかった。

部屋から最後に見たのは、住宅街を見下ろして立つ、巨大なロボットだった。
悪くはないデザインだ。
もしもプラモデルが売ってて、値段が二千円以内だったら買ってもいいかな、と思うくらいには。

そこから先は、街を見下ろしていた。

僕は、ロボットになっていた。


戦いは、すぐに始まった……わけではない。
父さん――母さんの乗るロボットの出現を、待ってからだった。
父さんは、雲をかき分けながら現れた。

♪ぱぱら、ぱらぱぱ、ぱぱらぱぱー

青空を震わすミュージックホーン
自動車――父さんは、ひと言でいえば、超巨大なヤンキー仕様のセダン車の姿をしていた。
僕の胸にあるコクピットで、狛江さんが呟く。

「デッパ竹槍……」

ラメ入りのボンネットには、腕組みした母さん。
ぱちん。
母さんが指を鳴らした。
ビカッと稲光。
すると次の瞬間、
どどん
と音が鳴って、自動車はロボットに変形していた。

同時に、通信が来た。

「操縦の仕方はわかるよね!さくらちゃん」
「はいっ!変身したら、わかりました」

そういうものらしい。

いま僕がどんな状態になっているかといえば、ロボットの外の景色と、コクピットの様子と、ロボットの内部の機械とか、稼働状況を示すメーターなんかを、ぜんぶ同時に見てる。

いまの母さんと狛江さんの通信は、A回線という、みんなに聞こえる回線で行われていた。
僕と狛江さんにだけ聞こえるB回線で、僕は話しかける。

「狛江さん、僕、がんばるから。遠慮しないで」
「うん、ありがとう。自分、がんばるからね!」

メーターの数値は、軽い興奮状態を示している。

「あのさ…嬉しかったんだ――レイコさんに会えて。
自分の親父が、レイコさんに憧れてたんだ。
それで、『女はレイコさんみたいに金髪じゃなきゃだめだ』って言って……金髪の女とばかり付き合って……最終的に結婚したのがフィンランド人のお袋で。
だから自分、ハーフなんだ。
自分、レイコさんみたいになれって親父に言われて育って……
だから今日、レイコさんに会って嬉しかった。
自分が目ざせっていわれたレイコさんが、かっこいい人で、良かった。
最高にかっこいい人で、良かった。
それに……レイコさんが、親父のことを覚えてくれてた。
自分のことを知っててくれてた。
ビッとしてるって、褒めてくれた。
嬉しかった……本当に、嬉しかったんだ」


戦闘が始まった。

【改訂版】<14>コトリの独白 ~第三者としてみると引くよね、それ。僕は当事者だから、逆になんとも思ってないけど~

誰もが嫌な予感を感じる中で始まったのは、それに相応しい、コトリの独白だった。

「女の子は、男の子を実の兄のように慕い『おにいちゃん』と呼び、その想いはやがて恋心へと変わっていきました。しかし少年が選んだのは、愛らしくも聡明な少女でなく、あろうことか派手な顔立ちと大きな胸を下品に見せびらかす、少女の姉だったのです」

この話に出てくる『少女』というのがコトリで、『姉』というのが母さんで、『少年』が父さんなのは、まず間違いないだろう。

父さんに対するコトリの横恋慕は、決して過去の問題ではなく、半ば現在進行形で、親戚一同周知にして禁断の話題だ。

「少年と恋人同士になった少女の姉が、少女の部屋と薄い壁一枚隔てただけの部屋に少年を連れ込み破廉恥な行いに耽るようになるまでに、時間はかかりませんでした。かつて…いや、いまでも恋している少年の『ううっ、レイコ!僕、僕、もう……お、お、おおおっ!』などとといった獣じみた声を、きっちり週五回聞かされる少女の胸の内は、いかなるものだったでしょうか?」

すでにコトリ以外の、誰もが俯いていた。
あまりにいたたまれなさすぎた

「この責め苦も、姉が妊娠し少年と結婚したのを機に、二人が少年の実家で暮らすか、新しく部屋を借りて住めば終わったことでしょう。
しかし、結婚した二人は、姉の実家、つまり少女と同じ家の姉の部屋、つまり少女の隣のあの部屋で、新婚生活を始めたのです」

横目で見れば、窓の外の景色で立ってる、観念獣。
(僕、なにやってるんだろう……)
そんな気持ちになってくる、僕だった。

「毎夜隣の部屋で繰り広げられる、新婚夫婦の営み。少女に出来ることといえば、子守りを任された際『ふくらんだのぉ。いま!びくってナカでふくらんだのぉ』『イタイの好きぃ!イタイの気持ちいいのぉ』などといった姉の嬌声を、赤ん坊の耳元で再現してやることくらいでした」

母さんの顎が、愕然とガクンと落ちた。
「はぁあ……?」
どうやら、これだけは初耳のエピソードだったらしい。

フォローしなければ。

「大丈夫!母さん!僕、覚えてないから!悪い影響とか受けてないから!その影響で性的な話題に病的な嫌悪感を示したりしてないから!」
「ほ、本当に?」
「うん!だってボク、おっぱい、だーいすき!

精神の平衡を取り戻すのに必死な僕たち母子。
と、その間――それをよそに、コトリは、狛江さんへとにじり寄っていた。

「……受け取って。私の二十四年間の恋心……その結晶を」

コトリの胸から、輝きの塊が取り出される。
あれが、コトリのハングレ・ハートか。

ドクロに山羊の頭に動物の内臓に、鉄の質感を持つ握り拳……
それらのモチーフのどれが恋心を象徴しているのかは、非常に疑問だった。

「そ、それは恋心っていうより、恨みの結晶って言った方が近いんじゃないかな……」
さすがの狛江さんも、後ずさっていた。
「ぜひ!」
しかし、コトリは逃さない。
「ぜひ!」
「ふぁっ!」

ハングレ・ハートを乗せたコトリの手のひらが、狛江さんの胸に押しつけられる。
押しのけられた膨らみが、持ち上がって、ぽわんと揺れた。
その谷間に、一気にコトリの手首までが沈んで見えたのは、目の錯覚じゃない。

いま輝きが発せられているのは、身体の表面じゃなく、身体のもっと奥。
狛江さんの、胸の中心からだった。

「きれい……」
呟いたのは、ヒカリだ。

光が消えた。
変身も終わっていた。

「照れちゃってんですか?照れちゃってんですか?」
メルが、狛江さんをつつく。
「うるせぇ……」
反論は、力なかった。

僕はといえば、言葉を失っていた。
「…………」
コトリが、子供の頃からずっと胸の奥のハングレ・ハートに溜め続けた、想い。
狛江さんが変身した、コトリのスーツは、いうならば白いゴスロリで、普通に可愛かった。

「こんなの、自分、着たことないしぃ……」
でも狛江さんにとっては、ぜんぜん普通じゃなかったみたいだ。
「あぁ、もぉ、恥ずかしいぃ…」
普通に可愛い格好の狛江さんは、異常に可愛くて、そして本人が照れれば照れるほど、その可愛さはいや増しになるばかりなのだった。

「はいはい!照れるのはそこまで!」
母さんが手を叩いて、
「はい!これ書いて!」
僕と狛江さんに渡したのは――

鉛筆と四〇〇字詰め原稿用紙。



「何を書くかって?
あんたたちが、お互いを――
倫太なら、さくらちゃんのことを。
さくらちゃんなら倫太のことを、どう思ってるかだよ。

ロボットと操縦者の関係になる。
そうなったら、気持ちも、変わる。
相手がどんなにイヤなやつだったとしても、
イヤでも、特別な感情を抱くようになってしまう。

最初は、それでもいい。
でも、時間が経つとわからなくなっちゃうんだ。

もしロボットと操縦者って関係じゃなかったら、
自分は、そいつのことをどう思ってただろうってことが、
考えても考えてもわからなくなる。

ハングレールの女も、ロボットになった男も、
心を病んだ奴らは、大体、そこら辺でひっかかっている。

だから、最初にロボットで発信する前に、残しておくんだ。
元々、相手をどう思っていたのかを。
後々、引っかからないように、考えるための手掛かりをね。

あー、ちなみに書き終わったら、誰にも見せなくていいから。
このお守り袋に入れて、肌身離さず持ってて」


(狛江さんを……どう思っているか、だって?)
そんなの、決まりきってた。

【改訂版】<13>ハングレ・ハート ~僕、操縦されちゃうの!? なんかエッチな感じでスゲエ嬉しいんですけど~

怪獣――大きさは、街で一番高いビルでも、ようやく膝に届くかってくらい。
どんな生物にも、どんな乗り物にも、どんな建物にも似ていなくて、要するにそいつは『××を大きくしたような』って表現が、まったく適用できない姿をしていた。

横を――僕は、狛江さんを見た。
狛江さんも、僕を見てた。

「あいつらは、あんたらがいまかけてる『妖精眼』ってメガネじゃなきゃ見えない」

再びメガネのフレームに現れた母さんは、いつものトレーナーにジーンズじゃなかった。
プラスチックで出来た特攻服、とでもいったら良いだろうか?

「裸眼でやつらを見れるのは、ハングレールの女だけなんだ。
『妖精眼』は宇宙のどこの星にもある――地球にも、元々あったっていう。
でも、奴らと戦う力を持ってるのは、ハングレールのロボットだけだ
だから、ハングレールの女は、宇宙のどこに行っても大事にされる――モテモテだ」

母さんが、狛江さんの顔をのぞき込むように見た。
そうしながら話を再開した――理由が、僕にはわかっていた。
ほとんど確信に近い、予感だった。

「あのさ、頼みがあるんだけど」

「はい」

応える、表情を見てわかった。
狛江さんもまた、僕と同じ予感を抱いているに違いなかった。

「さっきから言ってる通り、倫太はロボットなんだ。
ロボットっていうのは、操縦するもんだ。
漫画だと、自分で勝手に動くロボットもあるけど、でもハングレールは、そういうのはロボットって呼ばない――自分で動くのは生き物だ。
ロボットは、誰かに操縦されなきゃ動けない。
だから……ロボットの倫太にも、操縦してくれる誰かが要る

「はい」

「倫太を操縦してやってくれないかな……悪いんだけど、理由はいえないんだけどさ。
アタシでなく、コトリでもなく、ヒカリでもなく……これは、狛江さんにしか頼めないんだ」

予感はあたっていた。
もし僕が、同じ状況で、同じ頼みをされたら、どうするだろう?
やっぱり、不安になるだろう。
『自分で、大丈夫なんですか?』なんて訊いてしまうだろう。

でも狛江さんは、
「はい。自分、やらせてもらいます」
即答だった。

母さんが、目を線にして笑った。
「ありがとう。狛江さんってさ、下の名前『さくら』だよね――リョウタ君の子だろ?知ってるよ」
「親父を、知ってるんですか!?」
「あったりまえじゃん。かっこいい先輩だったもん。覚えてるよ」
「……ウス」
「さくらちゃんの噂、聞いてるよ。『リョウタ君の娘が、すげぇビッとしてる』って」
「………ウス」
「噂通りだよねー」
「………………ウス」

「コトリ!」
「……はい」
呼ばれてコトリが、前に出る。
コトリと母さんと狛江さんとで、三角を描くように立った。
母さんが、スーツの胸の切り込みに手を置いて言った。

「ハングレールの女は、ここに宝石を持っている――ハングレ・ハートっていうんだけどさ。
それを使って、こういうスーツに変身したり、ロボットを操縦したりするんだ」
「ハングレ・ハート……」
「ハングレールの女は、子供の頃から、自分の乗るロボットとか、スーツのデザインを想像するんだ。
ハングレ・ハートは、そういうのを中に吸い込んで、大きくなっていく」
「その……光ってるのが、そうなんですか?」

母さんの胸が、眩く、青く光っていた。
その上に手が置かれてなければ、誰も目を開けていられなかっただろう。

「うん。それでさ、さくらちゃんには、コトリのハングレ・ハートで、倫太を操縦してもらいたいんだ。コトリ!出して」
「…………」

今度は、コトリの胸が輝き出す。
光は、山吹色だ。
しかしその輝きの眩さと相反してコトリの表情は、不景気というか、辛気くさいというか、非難がましいというか、恨みがましくて……誰もがイヤな予感を抱いたのを確認したかのごとく頷くと、そのまま上目遣いになって、コトリは口を開いた。

「昔……女の子と、男の子がいました」

【改訂版】<12>いよいよ、僕は人間でないらしく ~だったら、人間じゃなかったら何なんだよって、今回はそんな話~

「あんたは、人間じゃない。まあ、アタシもなんだけどさ」

時は18世紀
徳川家重が将軍になったり、リスボン大地震が起こったり、ピョートル三世がクーデターで廃位させられたりしていた頃、ハレー彗星が地球に接近したその年に、僕たちのご先祖様は地球を訪れたのだという。

ハングレールっていう星から来たらしいんだけどさ……父さんじゃなくて、アタシの側の先祖が宇宙人だったんだ。生まれた星がどうにかなったとかじゃなくて……宇宙を旅して、気に入った星があったらしばらくっていうか、何百年かそこで暮らしてまた別の星を探しに行くって感じ?だったみたいでさ……いまでいう、ネットカフェ難民?みたいな?」
「じゃあ、僕も宇宙人……」
「ああ、違う違う。あんたは……」
「僕は?」
「あんたは、ロボット
「ロボット!?」
思わず出てしまった大きな声に、逆に、場が静まりかえった。

いまリビングのテーブルを囲んでいるのは、僕、母さん、狛江さん、メル、それから叔母のヒカリとコトリ――要するに、家にいる全員だ。

叔母二人の服装は、基本的に僕がジャイアントスイングをかけられた頃と変わっていない。違いを指摘するなら、ヒカリはいまや完全にゴスロリ。コトリは中学ではなく、どこで手に入れたのか、どこかの会社のOLの制服だということくらいだ(ニートなのに)。

「宇宙を旅するっていうとさ、当然どこに行ってもアウェイ状態?味方なんていないわけでさ……シャバいこと、やってらんないじゃん?それでさ、こう……ビッとした」
武装?
「そうそう。武装(どうぐ)が必要になるわけよ。ハングレールの女には、そのための能力があってさ、どういうのかっていうと……」
「いうと?」

「自分の旦那とか彼氏を、ロボットにする能力なんだ」

「って、ロボットにするって、どうやって!?」
「粘膜を通じたナノマシーンの注入」と、ヒカリが頬を赤くする。
「……具体的にいうと、性行為」と、コトリは指で作った輪に人差し指を出したり入れたり。

「ちょ、ちょっと性行為って……僕は、」
童貞?」とメル。
「……そうだよ。悪いかよ」僕がむくれると、
「自分も……経験ナイから」と、狛江さん。
それはなんだか、とっても嬉しくなる情報だった。

母さんが、お茶をずずっと啜って続けた。
「倫太の場合はさ、妊娠中から改造が始まってた」
「じゃあ、生まれたときから……」
「うん、ロボット」
「えぇっ!?」

ロボットであるというのがどういうことなのか、具体的には分からないのだが、なぜだか、がくっときた。

「ロボット…武装……」
一方、狛江さんはといえば、腕組みして唸りながら、ちろちろ僕を見てる。
っていうか……
「ちょ、ちょっと狛江さん!もしかして、僕の股間を見てない!?」
「み、見てない!自分、断じて、見てない!」
「確かにそこに隠されているのはビッグマグナムかもしれませんが、いま話に出ている武装とは、本当の意味での武装でしてねぇ」
と、メルが邪悪な笑みで放った嫌味に
「ふっざけんなよ!自分が、その、自分が見てたのは!未開封美品とか!そういう言葉が浮かんだからで!それだけで!それだけで!」
「なお悪いよ!」
「えぇええええっ!?」

狛江さんが慌てたところで、携帯が鳴った。
バイブに震えるシャンパンゴールド――母さんのだ。

「はい、あたし。ああ、そう。うん……まあ、ちょうどいいかな」

ちょうどいい?
とっさに、僕は、狛江さんを見てた。
狛江さんも、僕を見てた。
着信音からすると、いま母さんが話してる相手は、父さんだ。
これまでの話からすると――父さんも、ロボット。

「いま、倫太に話してたんだ。『あんたは、ロボットだ』って」

「はい。どうぞ」と、ヒカリが僕に差し出したのは、おもちゃめいた薄さのメガネだった。
「どうぞ」と、コトリが狛江さんに差し出したのも、おもちゃめいた薄さのメガネだった。
かけてみろ、ということだろう――かけてみた。

視界に、薄茶色のフィルターがかかった。
母さんの声を聞きながら、僕は、視線を動かしていった。

「ハングレールが、行った先々の星で、どうやって金を稼いだかっていうと」

メガネのフレームに囲まれた楕円の中を、メルが、コトリが、ヒカリが、右から左へと動いて、通り過ぎていく。

「ロボットで、戦ったんだ」

母さんも、メガネをかけていた。

「ハングレールのロボットでしか倒せない敵が、宇宙にはいるんだ」

母さんも狛江さんも、メガネを僕と同じ向きに動かしている。
メガネが、止まった。

メルが、言った。

「彼らは、観念獣(イデア・モンスター)と呼ばれています」

窓の外の景色――その真中に、怪獣が立っていた。

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